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フランスワイン

フランスワイン

全土に広がる多様なワイン造り、数々の有名産地を擁するワイン大国

キリン/メルシャン
DE LONG フランス ワインマップ UH101MP

ワインといえば、フランスワインがまず第一に思い浮かぶでしょう。現在、ワインの生産量ではイタリアが第1位でフランスが第2位、ぶどうの栽培面積ではスペインが第1位で次いで第2位となっています。しかし、品質の高さ、洗練されたワイン文化、知名度などで、フランスはワイン産地として高く評価され、常にトップの座に位置していることは変わりません。

これは、フランスの気候・風土が、ワイン用ぶどうの栽培に適していることが一番の理由です。北緯42度から51度、日本の北海道からサハリンあたりの寒冷地に位置する国ですが、地中海や大西洋の暖流の影響で全体的には比較的温暖な気候に恵まれ、独特の地の利を得ています。そして、それぞれの生産地域が土壌や気候に適したぶどう品種を栽培しているため、各地域のワインには個性豊かな特徴が現れているのです。

フランスワインの歴史

フランスでワイン造りが始まったのは紀元前600年ごろ。ガリアと呼ばれたフランス・マルセイユ地方に移動したギリシア人により始められた。その後、あのシーザーが率いるローマ軍の侵攻によって、ワイン造りはローヌ川沿岸からフランス各地に広まっていった。2?3世紀には、ブルゴーニュ、ボルドー、ロワール、シャンパーニュ、アルザス、モーゼル(ドイツ)へとぶどう栽培が広まっていったという。その後、ワインはキリスト教との結びつきを深め、修道院でのワイン造りが盛んになって、ますます人々に親しまれるようになった。

長い歴史のなかでは、時代に応じ、そのときどきで好まれる銘柄や産地があった。
たとえば、14から16世紀のルネサンス時代にはパリでロワールのロゼワインが人気を博し、17世紀のルイ14世時代にはブルゴーニュのワインが、そして18世紀中ごろのルイ15世時代にはボルドーやシャンパーニュのワインに人気が集まっていった。なかでも、大きな動きが、10世紀には、アキテーヌの公女が英国王ヘンリー2世の元へと嫁いだことから、ボルドーが英国領となったことである。逆に王の庇護によってワインの輸出を盛んにしたのである。それは、100年戦争(*1)でのフランスの勝利まで300年間続き、これが現在の一大産地としてのボルドーの礎になっていると言えるかもしれません。

 

しかし、フランスは優れた葡萄畑を持っているだけではなく、その範囲を限定し、格付けをし、統制していることです。優れた畑の等級別リスト作りは200年間も行われ体系化されてきました。

最初に1935年にAOC法を制定するなど、国を挙げてワインどの品質の維持・向上に取り組んでいることにもよるものです。

(*1)100年戦争
フランス王国の王位継承をめぐるヴァロワ朝フランス王国と、プランタジネット朝およびランカスター朝イングランド王国の戦い。伝統的に1337年11月1日のエドワード3世によるフランスへの挑戦状送付から1453年10月19日のボルドー陥落までの116年間の対立状態を指す。現在のフランスとイギリスの国境線を決定した戦争である。

ワイン法誕生のいきさつ

 

ワインは、あらゆる酒類の中でも最古のお酒といわれています。ぶどうの果汁が自然に発酵してワインが生まれるという、酒造りとしては工程がいたってシンプルであるからこそ、ぶどうの品種、ぶどうの育つ土壌、栽培法、気候、収穫時期、製造法、貯蔵法などが相まって、その個性が生まれます。ですから、それぞれのワインの個性を明確にし、品質を保っていくためには、生産地域を狭く限定して規制していくことが必要になります。そのために作られたのが「ワイン法」であり、そのなかで品質の基準となっているのが「格付け」(品質等級)です。

そもそもフランスで「ワイン法」が生まれた背景は、実はフランスワインに大きな事件が起きました。1930年代の中頃、ヨーロッパでは3年続きの悪天候と経済不況に陥り、有名産地を抱えるフランスのワイン産業も打撃を受けることになりました。そこには、フランスの有名産地を騙るワインが大量に出回るという不幸もあったのです。すでにフランスの人気産地であった、ボルドー、ブルゴーニュ、シャトーヌフ・デュ・パプなどでは、その対抗手段として法律の制定へと動き始めることになりました。これが「原産地統制名称法(A.O.C.、Appellation d’Origine Contrôlée)」の始まりです。通常「ワイン法」といわれますが、A.O.C.はフランスワインに限らず、フランスの農業製品であるコニャック、アルマニャックなどを含む酒類、チーズ、バターなどに対して与えられる認証であり、フランスの原産地呼称委員会(Institut National des Appellations d’Origine, INAO)が管理しています。

A.O.C.の歴史はもっと古く、原点はブルーチーズのロックフォールが議会の布告によって規制されたのが最初で、15世紀に遡ります。直接的にAOCの前身となった近代的な法の整備としては、1905年の「原料の偽装を取り締まる法律」、そして1919年5月6日に制定された「原産地保護に関する法律」です。この「原産地統制名称法(A.O.C)」を通常は、ワインの場合に対して「ワイン法」、チーズに対して「チーズ法」などと呼ばれています。

この格付とは別に、ワイン法より古い1855年にボルドーのシャトーをランク付けした「ボルドーワインの格付け」があります。1855年には、パリ万博に向けて、ボルドー・メドック地区を中心にワインの格付けが行われるまでになりました。しかし、これからというそのときに、害虫・フィロキセラの壊滅的な被害を被ることになってしまいます。それは第一次世界大戦後まで影響を及ぼします。害虫に強いアメリカ種の台木にヨーロッパ種を接ぎ木するという技術改良によって、ぶどう畑は息を吹き返しました。その後は、この逆境を吹き飛ばすように、生産量を飛躍的に伸ばしていったのです。

いまでこそ、揺るぎないワイン王国として君臨しているフランスですが、その歴史を紐解くと、思いがけないドラマを垣間見ることができます。だからこそなのでしょうか、その品質を守り、高めていく姿勢には並々ならぬものが感じられます。1935年に原産地呼称国立研究所(INAO)を設立、原産地統制名称(AOC)法を制定して以来、多様で高品質なワインを造り続けるための努力はいまも続いています。

フランスワインの品質等級

 

日常食卓でワインを楽しむために、知らなくても構いませんが、ワインラベルが読めたりするといっそう楽しみも深くなります。

原産地呼称は、フランスワインやブランデー、乳製品、農産物などについて規定されて法的に3つのカテゴリーに分けられます。上質になるに従い条件が厳しくなります。

1.A.O.P.(Appellation d’Origine Protégée=アー・オー・ペー

旧A.O.C.(アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ、Appellation d’Origine Contrôlée=アー・オー・セー

原産地呼称統制ワイン。2009年、欧州連合(EU)のEU法が保護原産地呼称により統一され、A.O.P.(Appellation d’Origine Protégée )となりましたが、A.O.C.も現存し使用されています。A.O.P.ワインは、ラベルに必ずAppellation ○○ Protégéeという表記があり、○○の部分が、登録された原産地名です。(例:Appellation Medoc Protégée。ポーイヤック、メドック、ボルドーというように、畑→村名→地区名→生産地域と狭くなるほど条件が厳しくなり、一般には高級品となる。ブルゴーニュでは更に、畑の名前までに細分化されている。)

2.I.G.T. 旧ヴァン・ド・ペイ(Vin de pays)

「地方のワイン」「地酒」の意味で1973年に制定されました。テーブルワイン(日常消費用ワイン)の一つですが、最も下のクラスにもフランスワインとしての産地名表示ができるチャンスを与えたもので、ラベルにPays ?(?に地名が入る)。異なる産地のワインのブレンドは禁止されている。中でも地中海沿岸部ラングドック・ルーションは重要で、最近、AOCに昇格されたり、AOCに引けを取らない高い評価を得ているものも出てきています。

A.O.C.同様、2009年、欧州連合(EU)のEU法が保護原産地呼称により統一され、EUではこのクラスは、英語で「PGI」(protected geographical indication)、「I.G.P.」(フランス語ではIndication géographique protégée)、イタリア語「IGP」(indicazione geografica protetta)=旧I.G.T.、スペイン語「IGP」(indicación geográfica protegida)、ドイツ語「g.g.A.」(geschützte geografische Angabe)=旧Land Wein、ポルトガル語「IGP」(indicação geográfica protegida)などの公用語訳を用います。

3.ヴァン・ド・ターブル(Vin de Table)

地理的表示のないテーブルワイン。かつてはフランス人が水がわりに飲んでいたワインですが、大手のネゴシアン(ワイン商社)が作っているものは、安価でも品質が安定しており、デイリーワインに適しています。

(*AOCワインの下にあったVDQSワインは、2011年まであったフランスワインの規格である。フランスワイン生産量全体の1%にも満たないものだったが2011年にすべての産地がAOCに昇格した。2011年末廃止された。)

EUに従わないフランスワインのプライド?!

元はフランスワイン法を見習ってイタリア、ドイツ、スペインなどでは、母国語でイタリアはD.O.C.とD.O.C.G.、ドイツはQ.b.A.・Q.m.P.、スペインではD.O.C.・D.O.と表示されています。2009年8月、ヨーロッパ連合(EU)に加盟しているワイン生産国において、欧州連合(EU)のEU法が保護原産地呼称により、統一的に判断できるようになりました。新しい法律に基づき、ラベルの記載などの改訂が行われました。

1)原産地名称保護ワインA.O.P.(Appellation d’Origine Protégée)と2)地理的表示保護ワイン(地域特性表示ワイン)I.G.P.(Indication Géographique Protégée、3)地理的表示のないワイン(テーブルワイン)の3つに大きく分けられ、イタリアやスペイン、ドイツのワインでは順次新しい表記に変更が進んでいますが、2009年以降もこれまで使用してきた各国別の原産地呼称で代替することも許されており、とくにフランスワインは、現在までその新しい表記への移行はフランスが最も進んでいないようです。EUの保護原産地呼称よりも、世界で最も古くから制定されたというフランスの保護原産地呼称制度への馴染みなのか、ワイン王国としてのプライドが原因でもあるのでしょうか。

 

引用・参考/『地図で見る世界のワイン/ヒュー・ジョンソン、ジャンシス・ロビンソン』
在日フランス大使館、キリン・メルシャン、他

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