ドイツワインの新しいラベル表示

ドイツワインのラベルの読み方

輸入ワインのラベルが分からない、とくにドイツワインのラベルは文字が多く、さっぱり分からないと思われる方が大半ではないでしょうか。ドイツ人気質というか几帳面というのでしょうか、たしかに世界で最も長いワイン名になっています。もともとドイツワインは、モーゼルやラインガウ地域の一部の名醸畑以外に村名や畑名は記載しなかったのですが、他の生産者や生産地域でも同様に畑名が付けられ、「収穫年」+「村名」+「葡萄畑」、そして「ブドウ品種」+「等級」がワイン名となりました。

それはそれとして読み方が理解できれば、世界で最も親切なワインのラベル(エチケット)であるということ言えます。実は単純明快で、すべてドイツワイン法で定められた表示義務以外のものは表示されていない(できない)のです。従ってある程度の知識があれば、そのワインがどういうワインなのかが誰でもおおよそ推測できるのです。

[ラベル例]

[例] 1996 ハルガルテナー シェンヘル リースリング シュペートレーゼ トロッケン
ブランド名(醸造所)
① APNr.(アーペーヌマー:公認検査番号)

読み方は下記をご覧下さい。

② 産地名(ワイン名) HALLGARTENER SCHŐNHELL?(ハルガルテン村のシェーンヘル「美しく明るい」畑:単一畑産)

上級ワイン(クーベーアーQ.b.A.)以上のドイツのワイン名は、

村名に-er(-の)が付き葡萄畑が併記されます。

③ 収穫年度(1996年に収穫した葡萄を原料にしていることを示しています。)

ワインの出来は当たり前ですが原料であるぶどうという農産物に左右されます。ヴィンテージを冠してそれぞれのクラスのワインを発売したということはそれ自体で葡萄がよく熟し糖度のある年にしかシュペートレーゼ以上の高級ワインは生産できませんから、クーベーアー(上級酒)から高級酒に至るまで、生産できた年度は間違いなくそれぞれの規定に達した良い年ということになります。良作年でクーベーアー(上級酒)で発売するワインが亡いために、わざわざシュペートレーゼ(遅摘み高級酒)クラスの糖度に達したブドウから格下げしてカビネット(肩書付高級酒)やクーベーアー(上級酒)で販売することはありますが、ヴィンテージはワインを購入するときの参考にはなりますが、出来の善し悪しではありません。

④ 品種-生産地域-等級-辛口

リースリング種を使用していることを示します。(ドイツワイン法では、その品種が85%以上使用されていれば品種名を表示できます。高級な生産者のワインはリースリング100%ですが、必ずしも品種の明記は義務ではありません。)

13の生産地域のうちラインガウ地域で産出したことを示しています。

品質等級が“肩書き付高級酒群”の“シュペートレーゼ(上記)”の基準を満たし、トロッケン(辛口)ていることを示しています。

⑤ 等 級 Q.m.P.”肩書き付高級酒群”のシュペートレーゼ(遅摘み)

下位からカビネット(見本タイプ)、シュペートレーゼ(S)、アウスレーゼ(A)、アイスヴァイン(氷果)及びベーレンアウスレーゼ(BA)、トロッケンベーレンアウスレーゼ(TBA)

⑥ エルツォイガーアプフュールンク(生産者元詰め)

⑦ アルコール分が12.0%であることを示します。

⑧ 容 量 750ml

アーペーヌマー A.P.Nr.(公認検査番号)


クーベーアー以上の上級、高級ワインはA.P.Nr.が表示されます。次の3段階の品質検査に合格しなければなりません。

1)第1段階 : 摘果時の熟度検査

2)第2 〃  : 化学分析検査

3)第3 〃  : 官能検査(テースティング)

アーペーヌマー

A.P.Nr.の読み方

[例] A.P.Nr.  30  148  008  (***)  97
①    ②   ③  ④        ⑤

① 公的検査機関の登録番号
② 生産者の所在地の登録番号
③ 生産者の登録番号
④ 生産者のその年に申告したワインの通し番号
⑤ 検査された年号

ドイツ農業省委託の検査当局は、何らかの問題が起きた時のために、生産者から提出されたすべてのワインが、各2本封印されて保管されています。そして当局はA.P.Nr.をもとに、世界で最も厳しいチェック体制を敷いています。いつでもそのワインの原産地までをチェックすることができます。

ドイツワインのラベルの混乱と弊害

ドイツワインのすべての畑に名前を付けるようになったのは、1950年の法改正からですが、それまではごく一部の一流畑以外では、畑の名前を冠して自らが元詰めして瓶詰めすることは少なかったのです。

ブドウ品種表示や等級は、ドイツワインの知識をある程度知っておられる方には便利なものの、こうした一つの生産者が単一畑で、栽培から醸造・瓶詰までを行った超一流畑の「生産者元詰めワイン」なら理解はできますが、これとは別に、全生産地域でQ.b.A.(クーベーアー)以上のワインを、すべて「収穫年+村名+畑名+等級」で表示するようになりました。

また、そうした単一の畑内ワインなら理解できるとしても、紛らわしいものが、「地区内の集合畑産ワイン」で、集合畑ワイン(グロスラーゲワイン)です。ドイツワインのラベル表示は世界でも例がないほど親切なのですが、単一の畑で造られたワイン以外の地区ごとに集荷されブレンドされた“集合畑名ワイン”までもが、畑名であると誤解しやすいことや、長い名前がかえってドイツワインに対してラベルが読めない人にはわかりにくさにつながってきたのも事実なんです。
例えば

  • ピースポーター・ミヒェルスベルグ(ミヒェルス山)/モーゼル地域
  • ツェラー・シュバルツカッツ(黒猫)/    〃    地域
  • オッペンハイマー・クレーテンブルンネン(ひきがえるの泉)/ラインヘッセン地域
  • ニアシュタイナー・グーテスドムタル(良い大聖堂谷)/   〃   地域

などがお馴染みですが、これらはその地区(ベライヒ)内の集荷葡萄もしくはワインを瓶詰業者がブレンドしたワインのブランド名で畑名ではなく「総合畑」といわれる地区ブランドワインです。また同様に同一地区内産のワインであれば、例えば「ベライヒ ベルンカステル QbA」(ベルンカステル地区のクワリテーツワイン)のような名称で販売することが認められました。

さらに「商標ワイン」というタイプがあります。

有名なものに

  • リープフラウミルヒ(「聖母の乳」) ラインヘッセン、ファルツ、ナーエの3大栽培産地域で作られた輸出用の50%を占める生産量の多い商標ワイン
  • モーゼルブリュムヒェン(「モーゼルの小さな花」)モーゼル地域産の商標ワイン
  • モーゼルターラー(モーゼル谷) 上記と同様
  • バーデン ドライ(辛口)

などがあります。

ドイツワインラベルの表示の簡素化

ドイツ人の生真面目とされる国民性からでしょうか?本格的な単一畑産の生産者元詰めワイン銘醸畑の高級ワインならまだしも、そうした畑名を知らない多くの消費者が、日常消費ワインである補糖された「集合畑ワイン」や「商標ワイン」を、多くの生産者元詰の単一畑名ワインと同じクラスのような誤解を招きやすく、「ドイツワインは甘い」というイメージを与えてきたことで、ドイツワイン全体のイメージを悪くしてきたことは否めません。日常ワインにこのような長い表記が必要なのかどうかという疑問が生産者、消費者に高まってきました。ドイツワインのピラミッドの頂点に立つべき、ごく限られた名醸畑の単一畑ワイン以外の畑までもが、「村名+畑名+等級」で表示するというのは、むしろドイツの伝統的な表示スタイルではなく、難解かつあまり意味がないのではないかということです。

グーツワイン(Gutswein=醸造所名ワイン)

そのような反省と見直しが、最近ではV.D.P.(銘醸ドイツワインメンバー)などトップ銘醸家を中心にして、すべて自家葡萄園産で同じ単一畑であっても、Q.b.A.には単一畑であっても表記ができなくする規定によるもので、また、単一畑ではない所有畑内の複数の畑のワインでも、「醸造所(guts)名だけ」にして、ラベルを簡素化しようとする動きがあります。ドイツワイン全体を甘ったるい白ワインと誤解を与えたり、単一畑産ワインであるような誤解を与えやすいという一流生産者の間から声が高まり始めたのも当然でしょう。ラベルを簡素化しようという運きが V.D.P.(ドイツ高級ワイン葡萄園連盟) などのドイツワイン生産者ではじまりました。それが「単一畑ワイン」とは別の「醸造所名ワイン(グーツワイン)」です。自家葡萄園内産ワインに限られるもので、ボルドーでいうシャトーワインの名称に相当します。
V.D.P.メンバーが所有する畑は、他の畑からみるとはるかに素晴らしいワインを産みますが、厳しく一流畑で素晴らしいワインができた時だけ、前述のように「1996 ヴェーレナー ゾンネンウーア リースリング カビネット」という葡萄畑名で瓶詰めするような動きが増えてきました。

これも出来が良い場合のみで、それ以外の並クラスのワインは、Q.b.A.以下に格下げしたり、ネゴシャン(醸造業者)に売ります。

[例]
  • Joh. Jos.プリュム(ヨハン ヨゼフ プリュム) クーベーアー
  • フリッツ ハーク クーベーアー
  • シュロス リーザー クーベーアー
  • グランツ ファシアン クーベーアー
  • リンゲンフェルダー リースリング クーベーアーなど

また、V.D.P.(銘醸ドイツワインメンバー)以外でも、「生産者と葡萄、等級」のみに簡素化した表示にし、旧来の表示を小さく併記する動きも増えています。

ほんと、シンプルになりました!

  

(左)ベルデン 2014 リースリング クワリテーツワイン|モーゼル

ベルデン(醸造所) 、2014年収穫 、リースリング種、クワリテーツワイン(上級酒)、モーゼル(栽培地域)

(右)ランゲ リースリング 2014 トロッケン|ラインガウ

(醸造所)、 リースリング種、2014年(収穫)|トロッケン(辛口)、ラインガウ(栽培地域)

ドイツの新しい辛口ワイン表示「Classic クラシック」

統一ロゴマーク

クラシック(Classic)は、2000年産から認められた辛口ドイツワインの新しいカテゴリーです。「クラシカルなその産地特有のぶどう品種から造られた高品質のワインであることを示し、味わいはしっかりとして力強く、香りが高く、バランスのとれた辛口であること意味する」。つまり、これまでのように辛口を表す「トロッケン(Trocken)」(シュペートレーゼ トロッケン等:原料ぶどうがシュペートレーゼの規定糖度で辛口に仕上げたという意味)の表示は、通常の高級甘口ワインのシュペートレーゼ(遅摘み高級酒)と紛らわしいので使用しない方向で、消費者にとってよりわかりやすいようにと考えられた表示です。2001年(2000年産)からなので、まだそうしたワイン表示は少ないですが、今後はこうした表示に切り替わっていくと思われます。同様に「セレクション(Selection)」(=最高級辛口ドイツワイン)もあります。

表示収穫年度、葡萄品種、クラシック(Classic)、地域名は必載。村名、単一畑は表示できない。

[例]2000 シルヴァーナー クラシック クーベーアー

規 定
残糖量 15g/Lまで

 新旧ドイツワインのラベル表示

 

新表示
Q.m.P. プレディカーツワインPrädikatweinという表示となり、クーベーアーQ.b.A.と同じ、原産地呼称保護ワイン(g.U.)の等級に変更。フランスワインのA.O.C.、イタリアワインのD.O.C.に相当。

クヴァリテーツワインはドイチャーワインやラントワイン同様、補糖が認められていますが、プレディカーツワインは補糖が認められていません。プレディカート(肩書き)にはこれまで通り、以下の等級があります。

  • カビネット:
    比較的軽快なワイン。熟したぶどうを 使用。低アルコール
  • シュペートレーゼ:
    重厚なワイン。完熟ぶどうを使用。 通常の収穫期より遅くに収穫
  • アウスレーゼ:
    完熟ぶどうを使用。その際、未熟果、不良果を取り除く
  • ベーレンアウスレーゼ:(略BA)
    過熟ぶどう、貴腐ぶどうから作られる、 豊潤でフルーティなワイン
  • アイスワイン:
    マイナス7度以下で氷結したぶどうを収穫し、氷結状態で圧搾した、天然濃縮 された果汁から造るワイン
  • トロッケンベーレンアウスレーゼ:(略TBA)
    ドライレーズン状に萎んだ貴腐ぶどうから造る凝縮度の高いワイン
クーベーアー トロッケン
  • クラシック Classic

クヴァリテーツワインの一名称。産地特有の品種から造られた、高品質の辛口ワイン。

Q.b.A.(クーベーアー)トロッケンと表示する場合あり。

例:クラシック クーベーアー

  • セレクション Selection

最高級辛口ドイツワイン

  • リースリング・ホッホゲヴェックス

リースリングから造られたクヴァリテーツワインの追加表示。リースリングだけを原料とし、より厳しい品質条件を満たさなければならない。

  • ファインヘルプ Feinherb

「洗練された辛口」を意味する。残糖がやや多めのトロッケンからハルプトロッケンに至る味わいを表現する言葉で、ニュアンスとしては辛口寄りとなります。ハルプトロッケンのハルプ(半分)という言葉にエレガンスが感じられないので、醸造家たちはあまり使いたくないようでちょっとしたブームになっています。

ターフェルワインTafelwein ドイチャーワイン Deutscher Wein

※ドイツ語ではWein(ヴァイン)ですが、ここではワインとしています。

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