千鳥酢


伝統食品 その2 米酢 千鳥酢

村山造酢株式会社
京都市東山区三条大橋東3-2


250年間住みついた微生物が造り出す伝統の米酢
千鳥酢ができるまで

酒どころは、米どころ?

平安時代までの日本では、米酢は貴族専用の高級品。室町になり庶民に普及したのは、原料の清酒の量産が可能になったから。江戸期には「酒どころ」は米酢の名産地でもありました。
京都・伏見の米酢は、清酒が原料の「白酢」(しろず)。素材の味と色を何よりも大切にする京料理のために、まろやかでやわらかな酢の味わいになりました。

千鳥酢の味わい

対して江戸では「赤酢」(あかず)。酒粕が原料なので、色は赤みを帯び酸味のキツさが特徴。コッテリした味付けの江戸料理が求めた味です。もう一つの酒どころ三河地方の特産品です。
「米酢はツーンとくる」との印象は、戦後、業界最大手メーカーの米酢が赤酢タイプであったからとされます。
発酵食品全般にあてはまることですが、原料が同じでも微生物の違いが味や香りに大きく影響します。酢では、多種多様な酢酸菌が、無数の酢を生成します。アミノ酸、コハク酸、乳酸などは、清酒にも含まれる「旨み」の成分ですが、クエン酸や酢酸などが、酢特有の鼻をツーンと刺激するもとです。
寿司飯に米酢を混ぜるときツーンとくるのは、このスッパさの成分がご飯の熱で揮発するからです。
千鳥酢がまろやかなのは、揮発しにくい旨みの成分が多く含まれているからです。スッパさが旨みに包み込まれているので、まろやかに感じられるのです。酸が揮発しにくいので、開栓後も長く持ちます。
調味料も嗜好品です。酸味のキツい酢の物が苦手な方には、千鳥酢をお薦めします。また用途に応じて酢を使い分けるのも、食生活を豊かにする一つの方法です。大切なのは、正しい原料でゆっくり天然醸造された酢を選ぶことです。

土壁が千鳥酢のみなもと?

京都・鴨川を東に渡れば山あい。しっとりとした京都の風情が残る東山三条。創業250余年の歴史を誇る千鳥酢醸造元、村山造酢?が古風な蔵を構えます。
平成7年1月の阪神大震災で被害を受け、現在は4月完工に向け改築中です。設計は、旧蔵を近代建築ですっぽり囲んだ少し変わった構造。内部は鉄骨の補強を加えた以外はすべてむかしのままです。
「この蔵でなければ千鳥酢はつくれない」と5代目当主の村山忠彦専務。長い年月の間に蔵の土壁に住み着いた無数の微生物が原料(清酒)に作用して、旨みのもととなるアミノ酸類を生成しているからです。
酢には醸造学では計り知れない未知の世界がまだまだ広がっているのです。

京料理と京友禅を有名にしたのも千鳥酢?

千鳥酢の創業は寛政(1789年?)のころ。元禄期に友禅染が盛んになり、色染めに米酢が使われるようになると京都で酢屋が急増しますが、明治になり、化学薬品におされ廃業が相次ぎます。その中で、千鳥酢はそのまろやかな酸味が京料理の料亭や寿司屋に愛され、京酢を代表する銘柄に育ちます。京料理の料亭が地方出店にも必ず持参され、その評判は全国に広まりました。


昼でもうす暗い蔵の土壁には、千鳥酢のうまさを醸し出す無数の菌が息づく
原料となる清酒も手造り。水切りした米を一石五斗(225kg)入る大きなコシキに移し1時間ほど蒸し上げる蒸し米の放冷。キャンパス布に広げ38℃前後まで冷やす

麹室(ムロ)での作業。手作業でていねいに麹菌を植え付ける

圧搾機(フネ)からしたたる原酒。これに酢酸菌を植え付けて千鳥酢を仕込む

山科にある仮社屋。東山の蔵で生まれ育った千鳥酢が全国へ旅立つ

千鳥酢のつくり

  1. 原料の清酒は、半分は、伝統の蔵で仕込む自家醸造、残り半分は購入した清酒もろみを伴わせて使います。
    米は、ふつうの清酒より磨きを少なく、精米歩合は80%ほど。清酒では雑味のもと敬遠される米の外層に多く含まれるタンパク質は、米酢では旨み成分のアミノ酸へと変化するので削るすぎは禁物。
  2. 仕込みは、清酒とあらかじめ造っておいた酢酸菌の濃い「種酢」をタンクに入れ、酢酸菌と蔵付き酵母で酢酸発酵を行います。
  3. 仕込み期間と規模により2つの方式に分かれます。
    静置発酵(表面発酵)
    温度などの環境設定が大変。比重の大きい酢酸菌はタンクの底に沈むと空気と遮断され死んでしまうため、種酢の継ぎ足しも必要です。人手と2?3ヶ月の時間がかかり、仕込み規模にも限界があります。
    機械発酵(全面発酵)
    均一で早くできるのが利点。プロペラにより、常にタンク内に酸素が供給されるので菌が酸素におおわれ、2週間ほどで発酵が終了し、種酢の補給も要りません。
  4. ・方式が違っても天然醸造に変わりはありません。
  5. 一般の米酢は香味調整のためのアルコール添加や添加物は使用しますが、千鳥酢では一切行いません。
  6. 発酵が終了すると、1?2ヶ月間の熟成を経てブレンドします。
  7. こうして調整と、滅菌(70℃)し、瓶詰めされます。

世界の酢

日本に清酒と米酢があるように、ビールの国ドイツでは麦芽酢、フランスではブドウからワイン・ビネガー、アメリカではリンゴからシードル(りんごのスパークリングワイン)とアップル・ビネガーと、民族は民族伝来の酒と酢をもちます。